FactorISM 2026 参加レポート第三部:町工場のまちを自転車で

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はじめに
初日の会場とトークセッション(第一部・第二部)に続き、2日目は自転車を借りて、JR久宝寺駅と八尾駅の周辺を走りました。壇上で語られた言葉が、実際のまちではどう見えるのか。それを確かめるための一日です。
工場と工場が、とにかく近い
まず驚いたのは、工場どうしの物理的な近さです。公式マップに立つピンの密度そのままに、ひとつの工場を出て少しペダルを漕ぐと、もう次の工場の前にいる。自転車で十分にめぐれる距離に、これだけのものづくりが詰まっています。

FactorISM公式パンフレットの「中エリアマップ」より。番号のついたピンが参加工場です。このJR久宝寺駅から八尾駅にかけてのエリアを、自転車でめぐりました。
工場をまとまってひらくという発想は、この近さがあってこそ成り立つのだと実感しました。来る人にとっては、一日でいくつもの現場を回れる。工場どうしにとっては、日ごろから顔を合わせ、仕事を融通し合える。「群で見せる」より前に、「群である」という土台があるのだと思います。
3社で伺った話
時間の関係でゆっくりとはいきませんでしたが、3社でお話を伺うことができました。埼玉から来たと伝えると、どこも驚きながら、オープンに迎え入れてくださいました。ひらくことを当たり前にしているまちの空気は、こういうところにも表れるのだと思います。
伺ったのは主に、採用、人材育成、定着についてです。
- 社内に「組織活性化チーム」を設けている会社がありました。 メンバーがキャリアコンサルタントの資格取得を目指しているそうです。社員一人ひとりのキャリアに向き合う役割を、外部任せにせず社内に持とうとしているのが印象的でした。
- 製造業の採用が難しいことは、ここでも変わりません。 ただInstagramなどのSNSを使って、新卒を採れている会社もありました。初日に聞いた「知られない仕事は憧れられない」という言葉の裏返しで、知ってもらえれば若い人は来てくれる。その実例だと思います。
行政と、一緒に仕事をする関係
どの会社でも話題に上がったのが、行政との距離の近さです。オープンファクトリーも、万博での展示も、市のほうから声をかけてもらったことがきっかけだったといいます。支援する側とされる側ではなく、一緒に仕事をする仲間としての関係がある。
行政と民間の両方を知る人が間に立ち、うまくつなぎながら仕事を振ってくれるのがありがたい、という声もありました。初日に市長たちが語っていた「行政はつなぐ役」という言葉は、現場の実感とも重なっていました。
そして、どの会社も強みとして挙げていたのが、後継ぎどうしの熱いつながりです。同じ立場で同じ悩みを抱える仲間が、自転車で行ける距離にいる。そのことが、一歩を踏み出すときの支えになっているように感じました。
意外だったこと
いちばん意外だったのは、これだけ取り組みが進んでいるエリアでも、「働きがいやエンゲージメントを高める取り組みは、まだ途上だ」という声が聞かれたことです。
工場をひらくと、来場者の「すごい」が職人の誇りになる。初日に聞いたその変化は、確かに起きているのだと思います。ただ、それは年に数日の「晴れの日」でもあります。その誇りを、毎日の仕事のなかでの働きがいとして根づかせること。ひらくことの先にある、もう一段奥の課題なのかもしれません。
裏を返せば、先を行く八尾でさえ、答えはまだ出ていないということです。外に向けてひらくことと、内に向けて働く人の声に耳を傾けること。その両方がそろったときに、町工場はもう一歩前に進むのだと思います。
おわりに
2日間を通して見えたのは、群であることの強さと、その群をつなぎ続ける人たちの存在でした。突然の訪問にもかかわらず、快く迎え入れてくださった皆さま、本当にありがとうございました。八尾で受け取った問いを、地元の川口で考え続けていきます。
その問いに対する今の考えを、第四部「川口に活かすには」にまとめました。
出典
出典・注記:参加工場の位置はFactorISM公式サイトのマップ。企業の取り組みは、2026年10月23日に筆者が3社を訪問して伺った内容。企業名は伏せています。