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ケース0130代・現場リーダー:プレーヤーから「人を見る役」への移行はなぜ難しいのか

※冒頭のエピソードは、公的な統計や調査をもとに組み立てた架空の人物・会社の話です。実在の企業や個人をモデルにしたものではありません。引用した数字の出典は、記事の最後にまとめています。

※この連載でいう「ものづくり中小企業」は、中小企業基本法で中小企業とされる製造業の会社(資本金3億円以下または従業員300人以下)を指します。なかでも、従業員が数十人〜100人ほどの会社を主に想定しています。

班長になった日

班長になって起きたこと:持っているのは物の作り方、急に求められたのは人の見方。社長・班長・部下の会話が途切れている
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大野さん(仮名・34歳)は、従業員30人ほどの金属加工会社で働く職人です。腕は社内でも指折り。先輩の定年を機に、班長を任されました。社長の言葉は「お前なら大丈夫だろ」。

ところが、若手に注意しても、なかなか伝わらない。自分は「見て覚えろ」で育ったため、伝え方がわからない。結局、急ぎの仕事は自分で片づけ、部下と話す時間は減っていきます。社長には、今さら相談しづらい。

半年後、大野さんはふと思います。「物の作り方は教わったけど、人の見方は誰にも教わってないよな。」

調べてみると:「人を見る力」は教わるもの

人を見る力は「教わるもの」:社外研修を行った対象は新入社員58.7%、管理職層49.0%。トヨタの「モノづくりは人づくり」。教わらないまま任されると、自分でやる→任せない→育たない→仕事が増えるのループに
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新入社員に研修を行う会社は、多くあります。一方で、人を見る立場になったときの研修は、それより少ない傾向にあります。

厚生労働省の調査で、正社員に社外研修を行った対象をみると、新入社員は58.7%、管理職層は49.0%でした。新人の研修に比べて、人を見る立場への研修は一段少なくなっています。

トヨタにも「モノづくりは人づくり」という考えがあり、リーダーの育成などの人づくりが生産を支えてきたとしています。

つまり、人を見る力は、本来は教えて身につけるものと考えられてきました。ただ、その機会は新人の育成ほどには行き渡っていない可能性があります。大野さんの会社では、それが「お前なら大丈夫」の一言で伝えられていました。

教わらないまま任されると、腕のいい人ほど上の図のようなループにはまりやすいと考えられます。

現場でも「社長には直接言いにくい」という声は聞かれます。班長が一人で抱え込むのは、珍しいことではないと思われます。

データ:「教える人がいない」は多くの職場の悩み

「教える人がいない」は多くの職場の悩み:人材育成に問題がある事業所80.1%、社外研修は50人以下の製造業で56.9%、育てる指導は各社の工夫に委ねられる。教える人と仕組みの確保が、多くの職場の課題
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厚生労働省の調査では、人材育成に問題がある事業所は80.1%。最も多い悩みは「指導する人材が不足している」でした。

人材育成の悩みの上位3つ:指導する人材が不足している59.5%、人材を育成しても辞めてしまう51.6%、人材育成を行う時間がない45.5%
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従業員規模によっても、差がみられます。製造業の調査では、正社員に社外研修を行う会社は301人以上で92.0%。従業員50人以下では56.9%です。

職長への教育自体は、法律で決められています(労働安全衛生法第60条)。ただし目的は労働災害の防止です。安全のための指導には制度があっても、育てるための指導は、各社の工夫に委ねられている。大野さんは、その空白に置かれている可能性があります。

で、どうしたらいいのか

班長の移行を支える3つの手当て:①役割を言葉にする②振り返る相手をつくる③状態を測って渡す。まずは①から、手軽に始めやすい一歩
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班長のつまずきは、本人の資質よりも、移行を支える仕組みがないことに原因があると考えられます。ものづくり中小企業で打てる手として、次の3つが考えられます。

① 任せるときに、役割を言葉にする

① 役割を言葉にする:任命の一言「お前なら大丈夫だろ」に、「部下が一人でできることを増やすのが、班長の仕事」と中身を添える
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「お前なら大丈夫」は信頼の言葉です。ただ、何を任されたのかまでは伝わりにくい面があります。任命のときに、班長の仕事を短い言葉で渡すことが考えられます。

  • 部下が一人でできる作業を、少しずつ増やす
  • 部下の困りごとを、週に一度は聞く
  • 自分で手を動かす時間は、決めた割合までにする

もう一つは評価です。自分で片づけたほうが評価されるなら、班長は任せにくくなる傾向にあります。部下が何をできるようになったかを、班長の評価に入れることが考えられます。

② 振り返る相手をつくる

② 振り返る相手をつくる:社長と月に一度15分、班長どうしで困りごとを持ち寄る、外部の人を振り返りの相手にする
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任せる力は、やってみて振り返ることで身についていくと考えられます。一人では、振り返りが難しくなりがちです。

  • 社長と班長で月に一度、15分だけ「任せたこと」「うまくいかなかったこと」を話す
  • 班長どうしで、困りごとを持ち寄る
  • 社内で言いにくければ、外部の人を入れる

部下の指導やリーダーの役割を学ぶ講座は、公的な職業訓練にも用意されています。たとえば、ポリテクセンターの「生産性向上支援訓練」には「職場のリーダーに求められる統率力の向上」といったコースがあります。自社で型を一からつくらず、外の型を借りる方法もあります。

③ 部下の状態を測って、班長に渡す

③ 状態を測って渡す:部下への3つの問いの結果を、班長が部下の様子をつかむ手がかりにする
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班長が一人で全員の様子をつかむのは、簡単ではないと考えられます。そこで、部下の状態を簡単に測り、結果を班長に渡す方法があります。問いは3つほどでも、手がかりになる可能性があります。

  • わからないことを聞ける相手がいるか
  • 最近、仕事で困っていることは何か
  • 半年後に、できるようになりたいことは何か

2028年4月からは、50人未満の事業場でもストレスチェックが義務になります。測る仕組みは、いずれ多くの工場に入ってくると見込まれます。義務への対応を、班長の手がかりとしても生かすことができると考えられます。

まずは①から

3つを一度に始めなくてもよいと考えられます。比較的手軽に始めやすい①から手をつけるのも、一つの方法です。

班長は、社長の方針を現場に届け、現場の声を社長に上げる位置にいます。ここが詰まると、上下どちらの会話も滞りやすくなります。「育てても辞めてしまう」(51.6%)という悩みも、その表れである可能性があります。若手の定着を考えるなら、まず支えるべきは班長だと考えられます。

ハーマスの考え方とご提案

ハーマスの考え方とご提案:班長のつまずきは本人の資質だけでなく会社の仕組みで支えられる課題。①部下へのアンケート②班長の役割や評価の言語化③外部の振り返り相手
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合同会社ハーマスでは、班長のつまずきを、本人の資質だけでなく、会社の仕組みで支えられる課題として捉えています。どこまで任せ、どう支えるかの答えは、会社の規模や仕事の中身によって変わります。そのため、決まった型を当てはめるのではなく、社長と現場の双方が納得できるやり方を一緒に探していくことを大切にしています。

このケースのような場合、たとえば次のようなご提案をしています。

  • 部下への数問のアンケートで、班長からは見えにくい現場の声を見える形にする
  • 班長の役割や評価の考え方を、社長と一緒に言葉にする
  • 外部の立場から、班長の振り返りの相手を務める

絵にかいた餅にせず、時には現場に飛び込んで本質を追求し、できたらいいねではなく実際に変化を起こすこと。それを信条に、現場に入って伴走しています。

ものづくり人事ラボでは、こうした「よくある悩み」を、年代や立場を変えて取り上げていきます。

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