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ケース1060代・再雇用社員:定年後も同じ現場で働くとき、何を「改めて」決めるべきか

※冒頭のエピソードは、公的な統計や調査をもとに組み立てた架空の人物・会社の話です。実在の企業や個人をモデルにしたものではありません。引用した数字の出典は、記事の最後にまとめています。

※この連載でいう「ものづくり中小企業」は、中小企業基本法で中小企業とされる製造業の会社(資本金3億円以下または従業員300人以下)を指します。なかでも、従業員が数十人〜100人ほどの会社を主に想定しています。

定年の翌日

再雇用で変わること、変わらないこと:仕事の中身はほぼ同じ、肩書はなくなり、賃金は下がる。期待される役割は説明がない
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佐々木さん(仮名・61歳)は、従業員60人ほどの板金加工の会社で、長く品質管理のリーダーを務めてきました。60歳で定年を迎え、翌日から1年契約の嘱託として再雇用されました。

仕事の中身は、ほとんど変わりません。ただ、リーダーの肩書は40代の後輩に引き継がれ、賃金も下がりました。品質の問題に気づいても、どこまで口を出していいのか迷います。後輩の判断を尊重したい気持ちもあります。会社からは「これまでどおり頑張って」と言われただけで、何を期待されているのかは話し合っていません。

半年後、佐々木さんはふと思います。「仕事は同じなのに、自分はいま、何を任されているんだろう。」

調べてみると:再雇用は「説明できる形」が求められつつある

再雇用をめぐる制度の動き:65歳までの雇用確保は義務、70歳までの就業確保は2021年4月から努力義務、同一労働同一賃金は再雇用者も対象。高年齢雇用継続給付の支給の上限は賃金の15%から10%に
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定年後の再雇用をめぐっては、ここ数年で制度の動きが続いています。

まず、65歳までの雇用確保は会社の義務です。そのうえで2021年4月からは、70歳までの就業機会を確保することが会社の努力義務になりました。

次に、待遇の説明です。厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインは、「定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けるものである。」としています。再雇用の社員も、同一労働同一賃金の対象です。待遇に違いを設ける場合は、仕事の中身や責任の範囲、配置の変更の範囲などを踏まえる必要がある、という考え方です。

さらに、賃金が下がった人を支える「高年齢雇用継続給付」は、60歳に達した日が2025年4月1日以降の人から、支給の上限が賃金の15%から10%に変わりました。

こうした動きから、再雇用は「これまでどおり」ではなく、役割と処遇を説明できる形にしておくことが、以前にもまして求められていると考えられます。

データ:60歳以降も同じ会社で働くのが一般的に

中小企業の3社に1社が、70歳までの就業確保を実施:65歳までの雇用確保は継続雇用制度の導入65.1%、定年の引上げ 31.0%。70歳までの就業確保措置の実施済みは全体34.8%、中小企業35.2%、大企業29.5%
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厚生労働省の集計(2025年12月公表)では、従業員21人以上の企業のうち、65歳までの雇用確保の措置を実施している企業は99.9%でした。その方法は、「継続雇用制度の導入」が65.1%で最も多く、「定年の引上げ」は31.0%です。

70歳までの就業確保の措置を実施済みの企業は34.8%で、前の年より2.9ポイント増えています。企業規模別では、中小企業(21〜300人)は35.2%で、大企業(301人以上)の29.5%を上回っています。

定年後も同じ会社で、同じ現場に立ち続ける人は、これからさらに増えていくと見込まれます。再雇用後の役割をどう決めるかは、一部の人だけではなく、多くの社員に関わるテーマになりつつあると考えられます。

で、どうしたらいいのか

再雇用を生かす3つの手当て:①役割を言葉にして合意する②処遇の理由を説明する③経験を生かす役割をつくる。まずは①から
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佐々木さんの戸惑いは、本人の気持ちの問題だけでなく、再雇用のときに役割を改めて決める機会がなかったことにも一因があると考えられます。ものづくり中小企業で打てる手として、次の3つが考えられます。

① 役割を言葉にして合意する

① 役割を言葉にして合意する:再雇用前の面談で、これからも任せたい仕事、後輩に引き渡す仕事、後輩リーダーとの関わり方を話し、紙1枚に残す
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再雇用は、契約を結び直す節目でもあります。その前に面談の場を設け、何を任せるのかを言葉にして確かめることが考えられます。

  • これからも任せたい仕事は何か
  • 後輩に引き渡していく仕事は何か
  • 後輩リーダーとの関わり方をどうするか

話した内容は紙1枚に残し、本人と後任のリーダーにも共有しておくと、現場での遠慮や迷いが減る可能性があります。

② 処遇の理由を説明する

② 処遇の理由を説明する:仕事の中身、責任の範囲、配置や異動の範囲について、定年前と再雇用後の違いを整理する
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賃金が下がることそのものよりも、理由がわからないことが納得しにくさにつながる場合があります。定年前と再雇用後で何が変わり、何が変わらないのかを整理しておくと、説明がしやすくなります。

  • 仕事の中身
  • 責任の範囲
  • 配置や異動の範囲

この3つは、同一労働同一賃金ガイドラインの考え方を参考にした例です。具体的な賃金の決め方は、社会保険労務士などの専門家に確認すると安心です。

③ 経験を生かす役割をつくる

③ 経験を生かす役割をつくる:指導役、品質の目、相談役の3つの例。肩書がなくなっても、役割ははっきりさせる
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肩書がなくなっても、長年の経験が生きる場面は多くあります。仕事に名前をつけて任せることで、本人も周りも役割をつかみやすくなると考えられます。

  • 指導役:若手や中堅に、技能や段取りを教える
  • 品質の目:不良の兆しや工程の癖を見る
  • 相談役:現場のリーダーが判断に迷ったときの相談相手になる

まずは①から

3つを一度に始めなくてもよいと考えられます。再雇用の前に30分の面談を設ける①は、比較的手軽に始めやすい一歩です。

再雇用の社員は、現場をよく知る人です。役割がはっきりすることで、本人の力が生きるだけでなく、後任のリーダーも動きやすくなると考えられます。

ハーマスの考え方とご提案

ハーマスの考え方とご提案:再雇用後の戸惑いは本人の気持ちだけでなく会社の仕組みで支えられる課題。①再雇用前後の役割面談②役割と処遇の考え方の整理③指導役などの役割づくり
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合同会社ハーマスでは、再雇用後の戸惑いを、本人の気持ちだけでなく、会社の仕組みで支えられる課題として捉えています。どんな役割がよいかは、会社の規模や仕事の中身によって変わります。そのため、決まった型を当てはめるのではなく、社長と現場の双方が納得できるやり方を一緒に探していくことを大切にしています。

このケースのような場合、たとえば次のようなご提案をしています。

  • 国家資格キャリアコンサルタントとして、再雇用前後の役割面談を行う
  • 任せる役割と処遇の考え方を、社長と一緒に整理する
  • 経験を生かす指導役などの役割づくりを、一緒に考える

絵にかいた餅にせず、時には現場に飛び込んで本質を追求し、できたらいいねではなく実際に変化を起こすこと。それを信条に、現場に入って伴走しています。

ものづくり人事ラボでは、こうした「よくある悩み」を、年代や立場を変えて取り上げていきます。

出典

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