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後継ぎ専務と読む製造業のこれから⑤結局、何から始める?後継ぎ専務が今やること

※この連載は、川口の金属加工会社を継ぐ予定の専務・宮田健太さんと、社長で父の正一さんを軸に、世界から地域まで製造業のこれからを全5回で考えるものです。登場人物と会社は、公的な統計や調査をもとに組み立てた架空のもので、実在の企業や個人とは関係ありません。引用した数字の出典は、記事の最後にまとめています。

※この連載でいう「ものづくり中小企業」は、中小企業基本法で中小企業とされる製造業の会社(資本金3億円以下または従業員300人以下)を指します。なかでも、従業員が数十人〜100人ほどの会社を主に想定しています。

「好きにやれ」の翌朝

任せたい気持ちと、手放せない気持ち:専務・健太は「やり方を変えたい」、社長・正一は「好きにやれ」。口ではそう言ったが、翌朝、工場で指示を覆した。バトンは、渡す側にとっても重い
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年末、健太さんはこの数か月で調べてきたことを1枚の紙にまとめ、父に見せました。世界の中の日本の位置、海外の安さの理由、大手の動き、川口の変化。

「来期から、やり方を変えたい。任せてくれないか」

正一さんは紙にしばらく目を落としたあと、短く言いました。

「好きにやれ」

翌朝。健太さんが前の晩に決めた段取りの変更を工場で伝えていると、正一さんがやってきて、古参の職長に言いました。「いつもどおりでいい」。職長は黙ってうなずき、ラインはいつもの順番で動き出しました。

昼休み、母が健太さんに小さな声で言います。「お父さんね、昨日の夜、あの紙をずっと読んでたのよ」

健太さんは思います。「任せると言われても、本当に任されるまでには時間がかかる。じゃあ、自分は何から始めればいいんだろう。」

4回を振り返ると:最後は「人」と「仕組み」にたどり着く

4回を振り返る:第1回 世界の中の日本は、縮んだのではなく伸びなかった→選ばれる理由を言葉にする。第2回 台頭する国は、安さの理由が資源より規模と人件費→量と値段で競わない仕事を選ぶ。第3回 大手5社は、給料と値決めの基準が変わりつつある→労務費を価格に乗せ、給料の見通しを示す。第4回 川口・埼玉は、働き手の顔ぶれと職場のルールが変わる→伝わる現場と、声を聞く仕組みをつくる
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この連載では、健太さんと一緒に、世界から川口まで順に視点を絞ってきました。

  • 第1回 世界の中の日本:日本の製造業は、国内では経済の約2割を保ってきた。縮んだのではなく、世界が伸びるなかで大きくは伸びなかった
  • 第2回 台頭する国:海外の安さの理由は、資源の自給ではなく、規模と人件費にあった
  • 第3回 大手5社:大手は初任給を上げ、役割で処遇する仕組みへ。取引先の労務費を価格に反映する方針も出ている
  • 第4回 川口・埼玉:外国籍の働き手が増え、2028年にはストレスチェックが50人未満の事業場でも義務になる

並べてみると、どの回も最後は「人」と「仕組み」の話にたどり着きます。世界や大手の動きを変えることはできませんが、自社の人と仕組みは、自分たちで変えられます。

データ:バトンタッチは、多くの会社で同時に進む

バトンタッチは、多くの会社で同時に進む:中小企業経営者の平均年齢は60.7歳(2024年)で60歳以上が過半数。交代後の経営者の平均年齢は52.7歳。健太さんは34歳で、早く関わるほど準備の時間がとれる
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中小企業白書2025によると、中小企業の経営者の平均年齢は60.7歳(2024年)で、60歳以上の経営者が過半数を占めています。また、経営者が交代したあとに就任した経営者の平均年齢は52.7歳です。

多くの後継ぎは、決して若くない年齢で会社を引き継いでいることになります。34歳の健太さんには、継ぐ前に準備できる時間があるとも言えます。正一さんがすぐに全てを任せてくれなくても、その時間を使って、会社の今を知り、仕組みを整えておくことができます。

で、後継ぎ専務は今、何をやるのか

後継ぎ専務が今やる5つのこと:①今を見える形に(人・技能・設備・お金)②選ばれる理由を言葉に(取引先と社員に聞く)③人が来て残る仕組み(採用・定着・育成)④機械と人の組み替え(省力化の先を決める)⑤対話と承継の段取り(父子・社員と話す場)
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4回の打ち手を、中小企業の規模で始められる5つにまとめます。

① 今を見える形にする

人・技能・設備・お金の今を、数字と一覧で掴むことです。品目ごとの原価(第2回)、誰が何をできるかの技能の一覧(第2回)、社員の声(第4回)などがここに入ります。見えれば、父子で同じ話ができるようになります。

② 選ばれる理由を言葉にする

取引先や社員に「なぜうちなのか」を聞き、自社の強みを相手の言葉で確かめることです(第1回)。短納期・小ロット・難加工など、量と値段で競わない仕事を選ぶ土台になります(第2回)。

③ 人が来て残る仕組みをつくる

給料の見通しを示し(第3回)、ここで働く理由を言葉にし(第3回)、外国籍の人にも伝わる現場にする(第4回)ことです。その原資として、労務費を価格に乗せる交渉も欠かせません(第3回)。

④ 機械と人を組み替える

繰り返しの作業は機械に任せ、人には段取り・検査・改善などを担ってもらうことです(第4回)。機械を入れる前に、人に何を任せるかを決めておくことが大切です。

⑤ 対話と承継の段取りをつくる

父子で同じ数字を見る場(第1回)をつくり、古参の社員とも話す機会を持ちながら、任される範囲を少しずつ広げていくことです。株式や税金などの手続きは、税理士などの専門家に早めに相談しておくと安心です。

進める順番:知る、整える、続ける

進める順番:最初の3か月は「知る」(①今を見える形に②選ばれる理由を言葉に)、半年までは「整える」(③人が来て残る仕組み④機械と人の組み替え)、その先も「続ける」(⑤対話と承継の段取り)。まずは「知る」から
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5つを一度に始める必要はありません。最初の3か月は①と②で会社を「知る」。半年までに③と④で仕組みを「整える」。⑤の対話は、その先もずっと「続ける」。この順番で進めることが考えられます。

正一さんがすぐにすべてを任せてくれなくても、「知る」ことは今日から始められます。そして、見えたものを父子で一緒に見ることが、バトンを渡す側の不安を少しずつ小さくしていくと考えられます。

ハーマスの考え方とご提案

ハーマスの考え方とご提案:後継ぎの改革は、本人の頑張りだけでなく会社の仕組みで支えられる課題。①月に一度の壁打ちで後継ぎの相談相手になる②アンケートと面談で会社の今を見える形にする③人事の仕組みと社内データの整備まで現場で伴走する
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合同会社ハーマスでは、後継ぎの改革を、本人の頑張りだけでなく、会社の仕組みで支えられる課題として捉えています。この連載で挙げた5つのことは、どれもハーマスが一緒に取り組めることです。関わり方は、会社の状況に合わせて次のように選んでいただけます。

  • 相談相手として:月に一度の壁打ちで、後継ぎの気づきや迷いを一緒に整理する(⑤)
  • 現場に入って:社員アンケートと面談で、会社の今を見える形にする(①②)
  • 仕組みづくりまで:給与の見通し、技能の一覧、社内データの整備まで伴走する(③④)

絵にかいた餅にせず、時には現場に飛び込んで本質を追求し、できたらいいねではなく実際に変化を起こすこと。それを信条に、現場に入って伴走しています。

全5回にわたり、後継ぎ専務の健太さんと社長の正一さんと一緒に、製造業のこれからを考えてきました。お読みいただき、ありがとうございました。

出典

※第1〜4回で引用した数字の出典は、それぞれの回の記事の最後にまとめています。

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